2018 7Jul.

美しくて実用的なトロヤン焼

ソフィア市民の台所、ジェンスキーパザール。ソフィアを訪れる外国人にとってはとても楽しい観光スポットでもあります。その中ほどにブルガリアのお土産を売る店があり、そこにたくさん並べられている陶器が、名物のトロヤン焼です。トロヤンという街周辺に、焼き物に適した赤い土があったことから発展したこの地方での陶芸は、トラキア人の時代、ローマ時代、さらにオスマン帝国の支配下を経て現代まで伝統の技が引き継がれてきました。

皿やカップ、水差し、調味料入れなど、サイズや色、用途に合わせていろいろと取り揃えられ、色も柄も鮮やかでどれにしようかと迷ってしまいます。例えば、小さな花瓶はコキチェという早春に咲く花を挿しておくのにぴったりで、春先にこの花が道端に咲いたら、摘んで帰ってトロヤン焼きの小瓶に生けると、春の訪れを感じることができます。またお皿の裏には小さな穴が開いていて、ひもを通して壁にかけると、とても美しいデコレーションにもなります。

一番観光客の目を引くのは「ギュヴェチ」用の土鍋ですが、お土産として日本に買って帰るには少し大きすぎるかもしれません。トロヤンという街は、焼き物だけでなく木工、金属加工、織物など様々な名産の工芸品があるそうで、そんな街の忙しい人々にとって「具材を入れてオーブンに入れておけば出来上がる」ギュヴェチ料理は実用的であったようです。地元の女性によれば、日本の土鍋と違ってギュヴェチの鍋は直接火にかけてはいけません。具材は冷たいまま入れてオーブンは予熱をしない。おススメは100℃から120℃の低温で一晩調理すること。豆でもなんでもトロットロにおいしく仕上がるそうです。

では、このトロヤン焼独特の模様はどうやってつけているのでしょう?器をろくろに乗せて回しながら、まず横向きに線を引いていきます。それから、その線がまだ乾かないうちに角状のもので縦方向になぞると、趣のある特徴的な模様になります。同じ職人が模様をつけても絶対に同じ柄はできません。そのため「世界に一つしかない」器が出来上がるわけです。


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