2016 12Dec.

ブルガリアン・ヴォイスの響き

皆さんブルガリアン・ヴォイスをご存知ですか?ブルガリアン・ヴォイスはブルガリアの伝統的な女声合唱のことで、独特なハーモニーがとても幻想的。リオオリンピックの閉会式で「君が代」のアレンジに使われたことで、日本でも話題になりましたね。この独特の歌声に魅了された人もいらっしゃることでしょう。あまりの独特さに最初、本格的なブルガリアン・ヴォイスの歌唱を聞いた時、「いわゆる和音が合っているのかはずれているのか、長調なのか短調なのか、リズムがあるのかないのか」私の中でちょっとした混乱が生じました。

こうしたブルガリアの歌は、女声合唱のブルガリアン・ヴォイスという形以外にもユニゾンなどの形でいろいろなイベントの場で歌われます。「デン・ナ・グラダ」(市の記念日)やバラ祭りなどの収穫祭では、子供たちやおばあちゃんたちも歌います。ブルガリアのフォルクロア(民族音楽)に属する音楽なので、この女声合唱があるコンサートでは男女の混声合唱があったり、ソロの歌手のテクニックの見せ場があったりします。

明るいとも物悲しいともとれないメロディーラインで独特の節回しとこぶしが入り、ひょっとすると日本の演歌や民謡とも通じるのでは?と思ってしまいます。この独特の感性はこの地域の音楽、ダンス、さらには農作業や家事、婚礼などの生活習慣や文化、そして複雑な歴史と深い関係があるようです。ブルガリアの人々、特に女性は感情表現が豊かで、この歌い方はその国民性とよく合っているように思います。嬉しさに高揚する気持ちとやり場のない怒りが同じ歌に込められているようにさえ感じられるのは、私だけでしょうか?

ちなみに、「タンブラ」という弦楽器で伴奏される歌、さらに歌ではなく「ガイダ」というバグパイプによる合奏もこの国の名物です。これらの楽器の音色もブルガリアン・ヴォイスと共通する、心を揺さぶる響きがあります。この神秘的な声と音の織り合わせは、ブルガリアの美しい宝物の一つと言えそうです。


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