2025.12
昔のブルガリアの紙幣にもその風景が描かれているほど、この国にとって古代から「塩」は重要な産業でした。そんな塩づくりの歴史を今に伝えているのが、ブルガリア東部、黒海沿岸に位置する町、ポモリエ(Поморие, Pomorie)にある塩博物館です。
ポモリエの町にあるポモリエ湖の周辺は塩泉や干潟が多く、古代から塩の生産地として栄えてきました。紀元前5世紀にはすでに塩田が存在していたといいます。町は昔、「アンヒアロス(Anchialos)」と呼ばれ、古代ギリシア語で「海や塩の近く」という意味があります。現在の名前「ポモリエ」も、ブルガリア語で同じ意味を持っています。
中世では、塩は「白い金」と例えられるほど貴重なものでした。交易の中心的な役割を果たしていたこの地の塩は、バルカン半島各地へと運ばれました。オスマン帝国時代にもその重要性は変わらず、ブルガリアの経済を支える大切な資源だったそうです。20世紀後半になると、産業としての地位は次第に衰退していきました。
そうした失われつつあった技術と文化を守るために誕生したのが、この塩博物館です。ブルガリア及び、東ヨーロッパで唯一の施設であり、太陽と風という自然の力を利用した伝統的な製塩を今に伝えています。実際に塩田で昔ながらの製法が再現されており、訪れる人は塩づくりの工程を間近で見学することができます。
塩づくりが、この土地の暮らしや文化と深く結びついていることを感じられるこの博物館。観光客だけでなく、多くの鳥たちも塩田を訪れており、自然の豊かさもあわせて楽しめました。
塩博物館
展示されている昔の道具
塩の結晶
昔の塩田の様子
昔のお札。塩の山が描かれている
塩田